本記事はPCに詳しくない方を対象としているため,厳密さを欠いている部分があることを予めご理解ください.
京都工芸繊維大学に進学される皆様,初めまして,情報工学課程新3年の蒼百合です.
本記事は,ラップトップPC(ノートPC)を
- 構成部品
- CPU
- GPU
- メモリ
- ストレージ
- OS
- 拡張性
- 可搬性
- ディスプレイ
の各点から評価します. なお評価は設計工学域(機械工学課程・電子システム工学課程・情報工学課程)の視点で行っています. 最後までお付き合いいただけると幸いです.
構成部品
PCを構成する主な部品は次の通りです.
「主たる部品」という意味ではこの他にもあるのですが,性能に大きな影響を与えないので省いています.
- CPU
- 処理全般を司る
- 性能が良いとソフトウェアの動作が軽快になる
- GPU
- 映像処理(画面への表示など)を司る
- 性能が良いとCADなどの画面に多くの図形を表示するソフトウェアの動作が軽快になる
- メモリ
- 容量が大きいと複数のソフトウェアの同時並行が軽快になる
- ストレージ
- 容量が大きいと多くのデータを保存できる
CPU
CPUを製造しているメーカーは主に次の2社です.
- Intel社
- AMD社
実はそれだけではないのですが,ラップトップに搭載されるCPUはその殆どがこれらのメーカーの製品です.
設計工学域の学生であれば次のCPUを搭載したラップトップの購入が推奨されています.
- Intel製 Core i7 シリーズ
- AMD製 Ryzen7 シリーズ
この他に,Intel製であればCore i3, i5, i9シリーズが,AMD製であればRyzen 3, 7, 9シリーズなどがそれぞれ存在します.
ここで○○シリーズと述べたのは,その名を関する製品が多数存在するためです.
各メーカーの製品ページを眺めると,CPUについて次のように書かれていることでしょう.
- Core i7-1165G7
- Ryzen7 5800U
CPUはその性能によって各シリーズに大別され,末尾の英数字はより詳細な性能や機能を表します. 性能に拘るのであれば末尾の英数字は重要ですが,基本的には先に述べたシリーズの(新しい)CPUを搭載したラップトップを選べば問題ありません.
Core i7であれば末尾の英数字の先頭2桁が11以上,Ryzen7であれば末尾の英数字の先頭1桁が5以上のものを選びましょう.(2022年3月時点)
GPU
ラップトップを選ぶ上でGPUの選択はあまり重要ではありません. というのも,多くのラップトップにおいてGPUはCPUと一体になっているからです. 一般にCPUと一体となったGPUは,分離されたGPUと比較して性能が低いですが,上記のCPUを搭載したラップトップであれば,学部の授業で扱うソフトウェアは問題なく動作します.
ゲーミング用途や設計用途とされる一部の製品はCPUと一体でないGPUを搭載していることがありますが,それらのラップトップは大型かつ高価であることが多いため,あまりお勧めしません.
メモリ
メモリ容量が16GB以上であるラップトップを推奨します.
ものづくり系の団体に所属して本格的な開発を行いたい方にはメモリ容量が32GB以上のラップトップをお勧めします.この点は予算との相談になります.
なおメモリは,各メーカーの製品ページではRAMと表記されることがあります.
ストレージ
ストレージには主に次の2種があります.
- HDD (Hard Disk Drive)
- SSD (Solid State Drive)
HDDよりSSDの方がデータの読み書き(保存などの処理)が高速で,かつ衝撃に強いことから,近年は殆どのラップトップがSSDを搭載しています.
ストレージがSSDであって,容量が500GB以上であるラップトップを強く推奨します. ストレージにはExcelやWordの文書データだけでなく,授業で用いるソフトウェアも保存されるため,250GBでは足りない場合があります.
ストレージ容量はn(\times 10^{m})で表される場合と,n(\times 2^{m})で表される場合とがあります.
OS
OSはOperation Systemの略で,様々なソフトウェアが動作するための基盤となるソフトウェアです. あるOS上で動作するソフトウェアが他のOS上で動作するとは限りません.
OSには主に次の2種があります.
- Windows
- macOS
Linuxなどもありますが,ラップトップに搭載されているOSはその殆どがこの2種のいずれかです.
macOSはApple社が販売しているMacシリーズのPCが採用しているOSですが,macOSをMacと表現することも多いため,これが製品を指しているか,OSを指しているかは文脈から判断する必要があります.
これに対し,Apple社を除く各メーカーが販売しているラップトップはその殆どがWindowsを採用しています.
設計工学域の学生であれば,Windowsを採用したラップトップ(つまりApple社でないラップトップ)を選ぶと間違いがないでしょう.
Macは良くないのか
SNSではしばしば次のような意見が散見されます.
- 新入生はWindowsを購入すべき
- 新入生はMacの購入を避けるべき
私もこの意見に概ね賛同しますが,これは「macOSはWindowsに劣る」ということを意味しません.
弊学を含む多くの大学では授業をはじめ,多くの活動がWindowsの使用を前提としているため,そこで扱うソフトウェアがmacOS上では動作しない場合や,動作してもWindows上とは扱い方が異なる場合があります. それらの差異に起因する問題はPC初心者には解決が困難である場合が多く,それらを回避するためにmacOSを採用したPCは避けた方が良い,ということです.
拡張性
PCに関する拡張性には様々な意味がありますが,ここでは「端子の豊富さ」だと考えてください. ラップトップには,外部機器と接続するために次のような端子が備わっています.(必ずしも備わっているとは限りません)
- USB端子
- Type-A
- 旧来のUSB端子
- 多くの機器はこの端子によってPCと接続する
- Type-C
- 比較的新しいUSB端子
- USB3.1や USB3.2という規格名が併記されている場合,より高速なデータ転送が可能
- DP Alt ModeやThunderboltという規格名が併記されている場合,映像出力も可能
- Type-A
- 映像端子
- HDMI端子
- 最も広く用いられている映像出力端子
- DP(DisplayPort)端子
- 高解像度の映像出力が可能な映像出力端子
- 通常用途ではHDMIと大きな差はない
- VGA端子
- 旧式の映像出力端子
- 備えているラップトップは殆どない
- HDMI端子
- LAN端子
- 有線LANに接続するための端子,近年は無線LANに接続することが多いため使用しない場合も
- 充電端子
- ラップトップのバッテリーに給電するための端子
- 充電端子にUSB Type-C端子を採用している場合もある
これらの中で最も重要なのはUSB端子の数です.これが多いほど利便性は高まります. データ転送用にType-C端子が1つ以上,外部機器(マウスやヘッドセット)接続用にType-A端子が2つ以上あるものがお勧めです.
また映像出力端子は必ずしも必要ではありませんが,HDMI端子はあると便利です. 研究発表では教室のプロジェクターを使用する場合や,自宅でディスプレイに接続する場合に利用します.
費用は嵩みますが,24インチ程度のディスプレイを購入して2画面で作業すると作業効率が格段に向上します.
端子の数が多いラップトップはその数が少ないラップトップと比較して分厚い傾向にあります. そのため,後に述べる可搬性と併せて考えるのが良いでしょう.
USBとデータ転送規格
PCと周辺機器とをUSBケーブルで接続する場合,両者はケーブルを介してデータをやりとりしています. データのやりとりに関する規格のことをデータ転送規格といい,USB Type-Cにはこれが複数存在することがUSBの理解を難しくしています.
まずType-AやType-Cとは端子の形状の規格で,データ転送規格とは無関係です. USBは元来データ転送に用いられるもので,一部のUSB Type-Cで行えるような映像出力や給電は必須の機能ではありません.
そのためUSB Type-C端子であっても,映像出力に利用できないもの,給電に利用できないものは存在します. またPCのUSB Type-C端子が映像出力や給電に対応していても,USBケーブルがそれらに対応していない,という場合も存在します.
これらのことから,PC側のUSB Type-C端子とUSBケーブルの双方が利用したい機能に対応しているかを見極める必要があります.
ここまでやや複雑なことを述べましたが,PC側のUSB Type-C端子についてはThunderbolt4という規格に対応していれば上記のあらゆる機能に対応しています. この規格に対応したUSB Type-C端子を持ったラップトップを選ぶと困ることはないでしょう.
無線規格
拡張性とはやや異なりますが,外部機器との接続という観点では無線規格も重要です. 学内Wi-Fiに接続するにはWi-Fi規格に対応している必要があります. また近年主流のワイヤレス製品(マウスやオーディオ機器)に接続するにはBluetooth規格に対応している必要があります. これらWi-FiおよびBluetoothの両規格に対応しているラップトップを選びましょう.
厳密にはUSB接続の子機により両規格に対応できますが,そのためにUSB端子を占有するのは得策ではありません.
可搬性
可搬性とは,言い換えれば携帯性のことです. 一般に,重いラップトップや大きいラップトップは携帯に不向きです. 重さや大きさの基準は人によって異なりますが,重さは1.5kg以下のラップトップを選ぶと良いでしょう. 大きさについては後に述べるディスプレイの項で解説します.
また,可搬性には鞄も大きく影響します. ラップトップ収納用ポケットを持つリュックサックを用いることは運搬時の破損に対して有効な対策です.
通常の鞄で運搬する際も,ポーチなどに収納するのは有効です.
ディスプレイ
ディスプレイが13~14インチのラップトップがお勧めです. ディスプレイが15インチ以上のラップトップは大きく(かつ重く)運搬に不向きですが,13インチ未満のラップトップは画面が小さく文書作業に不向きです..
個人的には13インチでも小さいため,14インチのラップトップを強く推奨します.
ただし先述の通り重さや大きさの基準は人によって異なるため,その運搬が苦ではないという場合には作業効率のためにディスプレイの大きいラップトップを選択するのも良い選択と言えるでしょう.
また,ノングレア(無反射) 加工が施されたディスプレイは目に優しいためにお勧めです. ただし,タッチディスプレイ(指やペンでの入力が可能なディスプレイ)の多くはそうではないため,これらは多くの場合トレードオフとなります.
購入後の注意
PCの購入・到着後はWindowsの指示に従って初期設定をすることとなりますが、ユーザ名は必ず半角英数字にしましょう. ユーザ名が日本語(全角文字)だと,いくつかのソフトウェアは正しく動作しません. またユーザ名は一度設定すると変更できないため,その場合にはOSの再インストールが必要です.
これは非常に手間の掛かる作業です.不慣れな方であれば,教員などPCに詳しい方の手を借りることになるでしょう.
おまけ
おまけとして,ラップトップの他にあると便利な周辺機器を挙げます.
- 無線マウス
- トラックパッドを利用するより遥かに作業効率が向上します.
- マウスパッド
- マウスを使うならば併用すると良いでしょう.
- 作業効率を向上させるほか,マウスの寿命も伸ばしてくれます.
- ヘッドセット
- 基本は対面授業が行われますが,オンライン授業では重宝します.
- 友人との通話にも便利です.
- 外付けSSD
- データのバックアップに利用します.
これらはオンライン世代の皆さんには必需品と言っても過言ではないでしょう. 特にバックアップ用の外付けSSDの購入は強く推奨します. データはいつ破損するかわかりませんが,たとえレポート提出前日にデータが破損しても「データが破損したので提出期限を延期してほしい」は通じません. 定期的なバックアップはいざという時に貴方を助けてくれます.
筆者は過去12年でデータ消失を4回経験しましたが,2回は大学入学後です.データ消失に限らずPCにトラブルは付き物ですから,バックアップは社会人のマナーだと思って必ず行いましょう.
総括
いかがでしたでしょうか.語り足りないことは多くありますが,以上を理解していただければ良いラップトップを選択できるのではないかと思います. これだけではよくわからないという場合は生協推奨のラップトップを購入するのも良いでしょう.
またラップトップの購入は予算との戦いでもあります.簡単な質問であれば,Twitterで @Sapphire_Lilith まで DMを頂ければ対応できるかもしれません.
それではまたどこかでお会いしましょう.